文学 - 医学史と社会の対話

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読みながら考える―『麦ばあの島』にみるハンセン病と家族関係、そして教材としての可能性<後編> /田中キャサリン(大手前大学)
Click here for an English version. >> 岡山県の長島愛生園を訪れた大手前大学の学生たち(2017年5月)  前編では、『麦ばあの島』の物語としての複雑さや豊かさについて見てきました。後編では、この作品で、冒頭に予期せぬ妊娠と別れにさらされた、まだ分別もつかない大学生の聡子...
読みながら考える―『麦ばあの島』にみるハンセン病と家族関係、そして教材としての可能性<前編><br>/田中キャサリン(大手前大学)
Click here for an English version. >>  2001年、ハンセン病に関する医療政策が人権を侵害したと主張する元ハンセン病患者のグループが、日本政府に対して起こした訴訟に勝訴しました。この勝利は、ハンセン病療養所入所者達の何十年にも及ぶ社会的、政治的活動の集大成でした。しかし...
医者として、文学者として――中原呉郎とハンセン病療養所の同人作家たち /佐藤 健太
 中原呉郎というひとをご存知でしょうか? 『山羊の歌』『在りし日の歌』などで著名な詩人・中原中也の弟です。  中原呉郎は1916年に山口県吉敷郡(現在の山口県山口市)に生まれました。中原家は代々開業医の家系で彼は五男でした。1938年に長崎医科大学に入学し、1942年に医師免許証を取得します。2ヶ月間見習士官をつとめた...
感染症と人類の闘い―国際協力の発展― /詫摩佳代(首都大学東京)
感染症と人類社会―いくつかの文学を手掛かりに  2014年、世界を震撼させたエボラ出血熱は、2018年5月、再びアフリカのコンゴでその勢いを盛り返しつつある。感染症は歴史的に人類社会を震撼させ、時には破壊的な打撃を与えてきた。例えば14世紀半ばのヨーロッパでは、黒死病(ペスト)が大流行した。内陸アジアで発生したペストは...
『病短編小説集』 書籍紹介/石塚 久郎(専修大学)
『病短編小説集』(平凡社ライブラリー・2016年) E.ヘミングウェイ、W.S.モームほか【著】石塚 久郎【監訳】 価格 ¥1,512(本体¥1,400)  愛や戦争は詩、演劇、小説のテーマになるのに病気が文学の主要テーマのひとつにならないのはおかしいわ、と嘆いたのは20世紀イギリスの小説家ヴァージニア・ウルフです。作...
歴史(医史)研究と社会との接点 /尾﨑 耕司(大手前大学)
 最初にひとつ現代語訳した史料をあげて、この記事をはじめたいと思います。 影写の由来 (−影写とは敷き写しのこと。ここではこの史料の表面である複製版を指すと思われます)  医制制定の由来については、いまだ明らかではありません。いつから起案をはじめ、誰が関与して立案したのか全くうかがい知ることができません。以前たまたま相...