『高校でまなぶ感染症の歴史 歴史総合の授業でつかえる教材集』を公開しました

『高校でまなぶ感染症の歴史 歴史総合の授業でつかえる教材集』を公開しました

このたび、「医学史と社会の対話」にて企画・運営したワークショップ「コロナの時代の感染症史教材を共創する─歴史総合にむけて─」をへて『高校でまなぶ感染症の歴史 歴史総合の授業でつかえる教材集』が完成しました。PDFにて公開いたします。

2020年3月11日に世界保健機関が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)を宣言してから、およそ2年の月日が流れました。2022年3月現在、この感染症は依然として衰えを見せず、私たちに驚きや戸惑いを与えて続けています。感染症の流行をよりよく理解しようと、この数年、感染症の歴史が見つめなおされています。

ワークショップ「コロナの時代の感染症史教材を共創する─歴史総合にむけて─」では、感染症史・医学史の研究者と、その呼びかけに応じて集まった地歴担当の高校教員等が、5回にわたってオンラインで議論を重ね、感染症を教え、学ぶための教材の「共創」に取り組みました。本教材集には、高校教員の先生方に作成いただいたものを含んでいます。

本教材集は、さまざまな資料の読み解きを重視する高等学校の新科目「歴史総合」を念頭に、感染症の歴史を考えるために役立つ資料を収録し、実際の高等学校での歴史の授業で利用していただこうという趣旨で作成しました。具体的には、①天然痘とワクチン(種痘)、②コレラと公衆衛生、③忘れられたスペイン風邪パンデミック、④地域史から見た感染症の4つのテーマを取りあげています。感染症の歴史を学ぶことで、過去の人間社会の歴史をより立体的に多角的に理解する力、そしていまをみつめなおす洞察力を養ってもらうことを目標としています。もちろん、高校の先生や生徒だけでなく、一般の方が読み物として気軽に楽しんでいただくこともできるのではないかと思います。

もちろん、手探りで進めた企画であったため、残された課題や不十分な点も多々あります。とりわけアジア・アフリカ史に関する教材がほとんど含まれていないことが挙げられますが、これはコーディネータの専門分野の偏りからくる限界です。今後、実際の授業での実践報告やご批正をふまえた改訂、ワークショップの中で作成された教材の追加等ができればと考えています。是非、皆様からの建設的なご意見やご提案をお寄せいただけましたら幸いです。

なお本ワークショップならびに教材集作成は、日立財団倉田奨励金採択プロジェクト「 医学史と社会の対話―メディカル・ヒューマニティーズの社会への研究成果還元およびアウトリーチ活動の展開」(代表:鈴木晃仁)の助成のもと、「感染症アーカイブズ」プロジェクト(代表:飯島渉)の協力を得て行われました。

ワークショップに参画していただいた方やご助言・ご協力くださった皆様に、あらためてあつく御礼申し上げます。

医学史と社会の対話 ワークショップコーディネーター: 井上周平、梅原秀元、高林陽展、廣川和花、宝月理恵