橋本 明 愛知県立大学(教育福祉学部)教授

経歴:幼少時より動植物に親しみ、生物学者を志す。東京大学理学部で生物学を学んだ(のか?)が、思うところあって同大学院医学系研究科では精神衛生学(現・精神保健学/精神看護学)を専攻し、精神障害者の社会復帰に関する研究や実践に従事。院生時代の数年間は、練馬区内の精神障害者作業所の職員でもあり、利用者とだべりながら、ひたすら袋貼りをする日々が続いた。大学院を中退して就いた最初の教員ポストは、東京都立大学(現・首都大学東京)人文学部社会福祉学専攻。その後、ドイツ留学をはさんで、山口県立大学看護学部、さらに愛知県立大学文学部、そして同大学教育福祉学部と渡り歩いてきた。現在、大学ではおもに精神保健福祉士養成に関わる講義や実習を担当している。専攻や職場が変わるたびに、自らの研究内容を変身させてきた。だから、研究の領域や方法にこだわりはないが、どういうわけか精神医療の歴史的な研究は長く続けている。

研究の紹介:私の精神医療の歴史的な研究は、近代・現代における病院入院・施設収容一辺倒ではない「精神医療のもうひとつのありかた」への関心からはじまっている。研究初期には、精神医療史研究の入口となるドイツでの研究生活の影響から、西欧における病院外ケアの歴史(とりわけベルギーの小都市ゲール Geel における精神科里親制度の展開)と近代日本の精神医療史(とりわけ京都の岩倉をはじめとする伝統的治療実践)との比較研究に力点を置いていた。その後、トヨタ財団の研究助成(2004~2006年度、研究課題名「精神病者監護法下における監置患者の暮らしと地域社会」)を契機に、日本の精神医療史自体に研究の軸足を移すことになった。「近代日本精神医療史研究会」を組織し、日本各地における病院外の監置患者や神社仏閣における伝統治療に関するフィールドワークをはじめた。近年では、精神医療史資料の保存と利用にも関心が向かい、その一環として「精神医療ミュージアム移動展示プロジェクト」を展開し、国内外で近代日本の精神医療史に関わる展示会を開いている。
なお、研究の詳細は以下のサイトをご参照。

>>リサーチマップにアップされた研究業績

>>近代日本精神医療史研究会のブログ