尾崎 耕司 大手前大学(総合文化学部)教授

経歴:神戸大学で日本史を学ぶ。日本近代の医療や公衆衛生を研究。とくに、前近代に「養生」と言い表され「自力救済」に属する事柄であった医療や感染症への対処が、近代に「医療行政」「衛生行政」など公的な行政として成立していく過程に注目し、これを法制史や社会史の方法論を採り入れて検討している。主たる業績に、「明治維新期西洋医学導入過程の再検討」(『大手前大学論集』13号、2013年)、「近代国家の成立-軍隊・学校・衛生」(日本史研究会、歴史学研究会編『日本史講座』 第8巻、東京大学出版会、2005年)、「万国衛生会議と近代日本」(『日本史研究』439号、1999年)、「後藤新平の衛生国家思想について」(『ヒストリア』153号、1996年)などがある。

研究の紹介: 本研究では、幕末明治維新期以降繰り返し日本を襲った感染症であるコレラの流行をとりあげ、これを様々な角度から検討したい。尾﨑は『日本史研究』誌上に発表した「万国衛生会議と近代日本」以降、イギリス公文書館をはじめとして国際衛生会議(International Sanitary Conferences)関連の史料を収集してきた。まずは、この史料を用いてコレラパンデミック下での検疫にかかわる国際的な議論を検討する。つづいてかかる国際的な議論や国際法の解釈の変化が日本の海港検疫にいかに規定したのかを分析する。また、他方では日本社会の問題点、すなわちコレラ流行時に明らかになる人々の慣行、一般に定着していた社会通念と西洋的な予防措置との相克などを検討する。総じて、国際的関係と日本社会の伝統的なものとを双方踏まえながら、明治以降いかなる予防システムが形成されるのかを明らかにしたい。